Ned Rothenberg (アルトサックス、バスクラリネット)
ネッド・ローゼンバーグは、アルト・サックス、バスクラ、フルートで即興演奏を行うと共に、作曲家でもあるというマルチな才能を持ったミュージシャンである。その上、横山勝也に師事した尺八も相当な腕前で、古典の本曲から現代の即興まで幅広いレパートリーを吹き分けるから、日本人顔負けの力量 を持っているといえよう。彼を国際的に有名にしたのは、過去17年に、南北アメリカ、ヨーロッパ各国、それに日本で行った、数百回におよぶソロ・コンサートである。それは、現代のリード楽器の最先端をいく奏法を駆使したもので、新しいリード楽器の音楽とでもいうべきものを創り上げつつある。彼のソロ・サウンドは、現代人の心の内部に潜む不安を暴き出し、その亀裂をキッチリと埋めて行く。その演奏技法の水準の高さと、独特の音楽性は、しばしばエヴァン・パーカーや姜泰煥と比較される。彼は、もちろんソロ活動だけでなく、Power Linesと、Double Bandという二つのグループのリーダーでもある。後者のバンドは、2アルト・サックス、2ギター、2べ一ス、2ドラム、というユニークな編成のものだ。その他に、フルートのロバート・ディックとトランペットのハーブ・ロバートソンと組んだNew Windsというグループでは、シリアスで実験的な、ちょっと現代音楽に近い音楽創造を行っている。更に、ごく最近、ギター・べ一スとタブラ・ドラムをメンバーとしたSyncというトリオを発足させたそうだから、ネッドの意欲と活動は、音楽の全方位 に向かっていることが理解される。1978年からニューョークで活動を始めた彼が、これまでに共演した主なミュージシャンをあげてみると、エリオット・シャープ、サム・ベネット、佐藤允彦、ジョン・ゾーン、姜泰煥、梅津和時、サインホ・ナムチラック等今日の世界の第一線のミュージシャンの顔ぶれが並ぶ。リーダー・アルバムは数え切れないほどに多いが、新作としては、エヴァン・パーカーとのデュオCD「Monkey Puzzle」(Leo),「Sync」(INT) が発売されている。